能『俊寛』とチャイコフスキーの交響曲第4番。: お前は、この世界では、楽しむな。 [その他]
小さいころ、浦島太郎を主人公にした漫画を描いたことがあった。
浦島太郎は竜宮城じゃなくて、実は海の底の宇宙船に潜入していたっていう設定。
海に潜った浦島太郎が、好奇心から宇宙船に入り込んだあと、宇宙船は海の底から宇宙にワープ航行してて、地上に帰れた頃には何百年も経っていたっていう。そんな浦島太郎。
(最後、浦島太郎は自分の話を誰にも信じてもらえなくて淋しく死んでいく、っていうそんな結末にしていた。)
家で音楽を聴いていたら、そんな「浦島太郎」をなぜか思い出してしまった。
*
家で聴いていたのは、チャイコフスキーの交響曲第4番。
ロシアの民謡やワルツをたっぷり含んだ、明るい交響曲なんだけど、同時にこの曲はすごく怖い。
この曲は、お祭りのような舞曲の中に、死の世界を意識させるようなトランペットのファンファーレが突然挿入される。
全体はロシアの民謡やワルツを取り混ぜた明るい曲。
だけど最終楽章、死を連想させるファンファーレが音楽を中断させて、最後は全てが幻想のように鳴り響く、そんな曲。
(本当は明るい曲、のような気もする。
だけど自分が聴いた演奏では、最後のフィナーレが明らかに幻想として演奏されていた。)
何度お祭りに参加しようとしても弾かれてしまう。
周りの世界に馴染めない、そんなチャイコフスキー。
*
あるいは、去年見た能楽の『俊寛』。
若くして死んだ世阿弥の息子、観世元雅(かんぜもとまさ)が作ったとも言われる話。
舞台は源平合戦の直前の頃。
平清盛に疎まれて、薩摩国の鬼界ヶ島に流罪になっている藤原成経、平康頼、僧俊寛の三人のもとに、ある日赦免の使者を乗せた船がやってくる。
船が着き、清盛からの赦免状がその場で読み上げられるものの、俊寛の名前だけがない。
(俊寛だけは許されなかった。)
他の2人を乗せた船を見送る俊寛の姿で、物語は幕を閉じる。
小さな能舞台の中で、一人だけ、世界から取り残されたように立ち尽くす俊寛の姿を描いた、そんな能。
お前は普通の世界に戻ってくるな、って言われた人間の話。
*
子供の頃、昔ばなしの『浦島太郎』のことを考えるとき、海の底から空を見たらどんな空の色が見えてるんだろうって思ってた。
浦島太郎は呼吸ができてるわけだから、海の底は空気があって、その上空には海水の底が見えていて、そのまたずっと上に、うっすらと海面が見えているんだろうと想像してみたり。
海の底のさらに奥の、時間の止まった世界で暮らすっていうのは、それはいいことなのかも知れないけど、でもやっぱり、地上の人間の世界の中に混じって暮らしたいよね。
(チャイコフスキーはどっちだったんだろう?)
よっし。もうちょっと仕事がんばろう。
浦島太郎は竜宮城じゃなくて、実は海の底の宇宙船に潜入していたっていう設定。
海に潜った浦島太郎が、好奇心から宇宙船に入り込んだあと、宇宙船は海の底から宇宙にワープ航行してて、地上に帰れた頃には何百年も経っていたっていう。そんな浦島太郎。
(最後、浦島太郎は自分の話を誰にも信じてもらえなくて淋しく死んでいく、っていうそんな結末にしていた。)
家で音楽を聴いていたら、そんな「浦島太郎」をなぜか思い出してしまった。
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家で聴いていたのは、チャイコフスキーの交響曲第4番。
ロシアの民謡やワルツをたっぷり含んだ、明るい交響曲なんだけど、同時にこの曲はすごく怖い。
Tchaikovsky: Symphony 4 & Nutcracker Suite
- アーティスト:
- 出版社/メーカー: EMI Classics France
- 発売日: 2004/10/04
- メディア: CD
この曲は、お祭りのような舞曲の中に、死の世界を意識させるようなトランペットのファンファーレが突然挿入される。
全体はロシアの民謡やワルツを取り混ぜた明るい曲。
だけど最終楽章、死を連想させるファンファーレが音楽を中断させて、最後は全てが幻想のように鳴り響く、そんな曲。
(本当は明るい曲、のような気もする。
だけど自分が聴いた演奏では、最後のフィナーレが明らかに幻想として演奏されていた。)
何度お祭りに参加しようとしても弾かれてしまう。
周りの世界に馴染めない、そんなチャイコフスキー。
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あるいは、去年見た能楽の『俊寛』。
若くして死んだ世阿弥の息子、観世元雅(かんぜもとまさ)が作ったとも言われる話。
能楽名演集 能『俊寛』(しゅんかん) 能 『猩々乱』(しょうじょう みだれ) 観世流 観世寿夫 [DVD]
- 出版社/メーカー: NHKエンタープライズ
- メディア: DVD
舞台は源平合戦の直前の頃。
平清盛に疎まれて、薩摩国の鬼界ヶ島に流罪になっている藤原成経、平康頼、僧俊寛の三人のもとに、ある日赦免の使者を乗せた船がやってくる。
船が着き、清盛からの赦免状がその場で読み上げられるものの、俊寛の名前だけがない。
(俊寛だけは許されなかった。)
他の2人を乗せた船を見送る俊寛の姿で、物語は幕を閉じる。
小さな能舞台の中で、一人だけ、世界から取り残されたように立ち尽くす俊寛の姿を描いた、そんな能。
お前は普通の世界に戻ってくるな、って言われた人間の話。
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子供の頃、昔ばなしの『浦島太郎』のことを考えるとき、海の底から空を見たらどんな空の色が見えてるんだろうって思ってた。
浦島太郎は呼吸ができてるわけだから、海の底は空気があって、その上空には海水の底が見えていて、そのまたずっと上に、うっすらと海面が見えているんだろうと想像してみたり。
海の底のさらに奥の、時間の止まった世界で暮らすっていうのは、それはいいことなのかも知れないけど、でもやっぱり、地上の人間の世界の中に混じって暮らしたいよね。
(チャイコフスキーはどっちだったんだろう?)
よっし。もうちょっと仕事がんばろう。
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